今回ご紹介する一冊はこちら!
”天才ギタリストの蒔野(38)と通信社記者の洋子(40)。
深く愛し合いながら一緒になることが許されない二人が、再び巡り逢う日はやってくるのか――。
出会った瞬間から強く惹かれ合った蒔野と洋子。しかし、洋子には婚約者がいた。
スランプに陥りもがく蒔野。人知れず体の不調に苦しむ洋子。
やがて、蒔野と洋子の間にすれ違いが生じ、ついに二人の関係は途絶えてしまうが……。
芥川賞作家が贈る、至高の恋愛小説。”amazonより引用
先日放送されていた、アメトーーク!第3回読書芸人の回で、ピースの又吉直樹さんと、オードリーの若林正恭さんの2人がオススメしていて、さらには読書芸人大賞2016にも選ばれた作品となってます。
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大人向けの恋愛小説です。お子様には難しいかも!
天才クラシックギタリストの薪野(東京在住、38歳、独身)
と、通信社に勤める洋子(パリ在住、40歳、婚約済み)
らの、恋愛物語です。
クラシックギターの演奏ってあまり馴染みがないなと思い、調べてみるとこんな感じ。
おお、なんかすごい
しっとりと落ち着いた印象ですが要所で力強い演奏もあって…、なんか心が洗われる。
わたしがよく行くライブハウスでのバンドのギターと全然ちゃう…。
ちなみにマチネとは、お昼の公演のことね!
・内容(ネタバレなし)
2人は、薪野のコンサートを洋子が観に来ていて、終演後の舞台裏で初めて出会います。
出会ったときから蒔野は洋子に惹かれるんですが、洋子にはフィアンセがいて…
→でもやっぱり好きだから、決断をする!
→洋子も応える!
→びっくりするようなことで、すれ違い、疎遠になる。
→5年後。それぞれ別の人生を歩み出している
→またお互いのことを思い出す。そして…
という構成です。このすれ違いの箇所がね~!く~!!
こう、胸が締め付けられるようなね、ぎゅーって。そんな感じ。つらいわ~。
前編通してホントみなそれぞれ価値観、それぞれの正義を持っていて、
それが時としては他人の正義とぶつかりあいっこしちゃう。
でもそういったものすべてを乗り超えた、2人の愛。
純愛っていう言葉ともなんか違うような。
相手の周囲、過去、バックの状況すべてを包み込んでの愛。うーん。
「一晩一緒だったから好きになって付き合う」なんていうものとは対極にある、心からの愛のカタチが描かれています。
それでまた平野敬一郎さんの表現が恐ろしく素敵。
”もし彼がすぐ側にいたなら、恐らくは本葉が出たくらいの頃に気がついて、怪訝そうな顔で、洋子の心の中からそれを引き抜いていたはずだった。悪い妄想だ、と。洋子の心を乱していたのは、茫漠とした一万キロ弱に及ぶ東京とパリとの隔たりではなかった。一ミリと違わず正確に、彼の肌から彼女の肌までの距離だった。"本文より
肌と肌との距離!
まさに鳥肌が立ちました。
あとから読み返して気付いたんですが、これ平野啓一郎さんの実体験をもとに書かれてるんですね!
つまり薪野と洋子のモデルがいるんです!
ほぇ~。
現実のお2人がいまどうなってるのか…すごーく気になります。
過去は変えられる
あと、ストーリーとは若干ズレますが、わたしに強く響いたこの言葉。
物語冒頭に出てくる薪野の台詞です。
”人は変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?”本文より引用
これは洋子の心にグッと刺さり、その後も何度か洋子は想起します。
「他人と過去は変えられない。だけど、自分と未来は変えられる」
みたいなコピーをよく見ます。色んな本でも出てきました。
でも、違うんです。過去は変えられる。
つまり、過去に起こった事実そのものを変えることは出来ないけれど、
その事実に対する自分の想いや、意味合いはいくらでも変えることが出来る。ということ。
例えば、わたしのプロフィールにも書きましたが、わたしは小学校6年間、空手道場に通っていました。ただそれは嫌で嫌で、毎週のように練習日に近づくにつれて、
「空手行きたくないよう…」
と、真剣に思いながら行ってました。
中学、高校生までの僕の中で、空手をやっていた過去は、本当にただの嫌な過去、忘れたい過去だったんですね。
でも、大人になった今、「空手をやっていてよかった」と心から思っています。
理由としては、まずは礼儀が身についたこと。
空手道、柔道、華道、茶道、「道」と名のつくものはどれも、礼儀・作法を重んじるものです。
元気よく挨拶、目上の人への態度、正座、姿勢、心構え、等、を学びました。
当たり前のことですが、その当たり前を小学生時から出来る子はそうそう多くないと思います。
よく友達のお母さんや親戚に、「○○ちゃんは本当にしっかりしてるね」と褒められました。
そういったベースがあったからこその、今があるのだと思っています。
もう1点身に付いたのは、投げ出さないでやり続ける力です。
辞めることは簡単です。
嫌なことを続けるのは苦痛です。
多少嫌なことでも、なんとかかんとか頑張る。あと一日がんばろう。もう一日がんばろう。
それが積み重なっていけば、大きなものになっていく。その先には辞めようとしていたときには想像もつかなかったような価値が待っています。
イチローの名言にもありますね。
「小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただひとつの道だ」
わたしもそんな気持ちでなんとか踏ん張って空手を続けた結果、
あれよあれよと実力がつき、県で準優勝、第一回の全国小学生大会に出場することが出来ました。
もちろん、すぐに辞めるべきこともあります。ブラック企業勤務は即辞めるべきです。
でも、耐えて続けるという局面もあっていいと思うんです。
嫌なことを続けるためには、続けられる方法を工夫しますよね。
たとえば誰かに怒られて、「嫌だ、辞めたい」と思う。そうしたときに、
・相手も機嫌が悪かったのかもしれないから、仕方ない!
・次は怒られないよう、別のやり方でやってみよう!
とか、考えるでしょ。それ、自分のレベルアップでしょ。
継続は力なりといいますが、それは
「継続するために考え、工夫したことが力になるのだ」ということです。
小学生の頃にはもちろんそこまで考えられてませんでしたが、
なんとか継続してこれた結果、得られたものがある。
そんな風に考えたとき、
今こうして空手をしていた過去を振り返ると、その過去は絶対に自分の中で核となる、
めっちゃ大事な経験となります。
「過去は変えられる」
この作品を読んで、そんなふうに自分の過去と向き合う機会が出来ました。
ぜひご一読を。
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よーい、どくしょっ!